「耳珠」

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「ちょっと耳の穴、見てくれへん?」
突然、父にそう言われた。手にはペンライトを握っている。
「どしたん?」
「毛ぇ、生えとる?」
耳の中がゴソゴソして痒いらしい。
しぶしぶ私は父の耳の穴を覗いた。ペンライトで照らす。
「あぁ、もっさりしてるわー」
ほんと、めちゃくちゃ生えている。父も年老いたなぁ、と思った。
「これで切ってくれ」
眉毛カット用の小さなハサミを手渡された。
「えー? ちょっと怖いんやけど」
なんで私が父の耳毛をカットしないといけないんだ……とため息をつきながら、おそるおそるハサミを耳の中に入れた。
そして、チョキンと。
「……あ」
「痛っ! おい、どこ切った?!」
父が叫ぶ。私は血の気が引いた。
うっかり耳珠を切ってしまったのだ。
慌てた私は、その時たまたま身に付けていたネックレスを引きちぎると、一つ父の耳珠に詰め込んだ。

それ以来、父の耳珠はキラリと輝いている。
真珠で。
その他
公開:18/12/16 11:06
更新:18/12/16 13:17
耳毛坊主書いた時の もうひとつのネタ

壬生乃サル

自由きままに、気の向くままに。
サルも木から落ちる・る・る~。

壬生乃サル(MIBU NO SARU)
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