シッポ or ヒゲ

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「シッポとヒゲと、どっちがいい?」
 そう聞かれた。僕は人間だから、シッポがあると、いろいろと不便だと思った。「ヒゲ」なら、普通にみんな生えている。だから「ヒゲ」と答えた。
 目覚めると、小鼻の脇からはもちろんのこと、眉毛の中や顎、頬や唇の脇なんかに、白くて太くて長いヒゲがたくさん生えていた。
 少しの風にもヒゲは揺れ、匂いを感じた。湿度も判るから、天気予報は不要になった。遠くの声が耳にビンビンと響いた。暗闇でも、普通に行動できるようになった。
 不便なのは、髭剃りの時ヒゲを避けることと洗顔と、肩幅くらいあるヒゲが、周りの人に触れないようにすることだ。人に触られるとツンと痛いし、脂がつくのが嫌だ。毎食後、僕はヒゲをきれいにする習慣がついた。
 あの時、シッポと答えていたら、どうなっただろうか、と考える。それはそれで、多分楽しかったのに違いない。でも、やっぱりヒゲにしてよかったと思うのだ。
ファンタジー
公開:18/12/15 22:07
更新:18/12/15 22:13
毛祭り

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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