盗み

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マリさんは泥棒だ。
「パパ、わたし、まなちゃんの筆箱を盗んじゃった」
ただいま、と玄関から部屋に入ると、女の子が泣きながらお父さんに電話していた。マリさんの隣で。
電話が終わるとマリさんは女の子を家まで送り届けた。
僕は自分の部屋で見るべきではないものを見てしまった気がして動揺した。
あの子は誰で、どうして僕の部屋に?そして、何か盗んだって?
僕の散らかった質問をひと通り聞いて、マリさんはゆっくり話し始めた。
あの子は小学生で、友達の筆箱を盗んで隠した。でも、悪いことをしたって自分でわかってる。誰にも言えなくて、筆箱も返せなくて、苦しい思いをしていた。その筆箱をわたしが見つけた。それで、話を聞くことになって…。
「マリさんはあの女の子が気になったの?」
「あの子は泥棒になりたがってなかったから、辞めるなら早い方が簡単だから手伝っただけ。罪の意識があったら泥棒なんて続けられないよ」
ファンタジー
公開:18/12/17 13:31
更新:18/12/17 15:03

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