大家ストラ

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まな板をたたく妻のスタッカートのリズムで一日の幕が開く。
長男と長女はそれぞれランドセルと通学鞄をカチャカチャ鳴らして下りてきた。
顔を洗う水が流れ、蛇口がキュッキュと鳴く。
ハムと卵がフライパンでたてるジュージューという音を伴奏にして、テーブルに朝食の準備がコトコト整えられていく。
「いただきます」の合唱をきっかけに始まる、朝の第二楽章。
トーストのサクサクとミルクをすするズズーに、妻の「こら、音を立てない」の多重楽奏。ばあちゃんがまあまあとソナタをなだめると、笑い声の輪唱が大工のじいちゃんが建てた家を優しく包み込む。

誰かの産ぶ声から始まった小さな家族楽団が、鼓動の音符で楽譜を作ってきた。
これからどんな曲を奏でるのだろう。神様が振るうタクトが示すのは喜びだけじゃないけれど、だからどんな風に演奏するのか楽しみでしょうがない。
今日もわくわくのクレッシェンド。
毎日が、歓喜の歌。
その他
公開:18/12/16 23:09
更新:18/12/17 21:00

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