幻の青~フラワーネットワーク・アナザー②

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私の父の名を、白銀青龍と言った。
現存する自然交配のバラのうち、幻とされる青に、最も近いとも言われる青龍。見果てぬ夢の象徴だと、生前よく話した。
祖父が興した『白銀生花』を、父の代で『s'』と改めた。店名と名前の頭文字を掛けたと思いきや、小さなスマイル=微笑の意味らしい。
『幻より、目の前の笑顔が大事だからな』
言葉通り、忙しい中でも、常に家族を忘れない人だった。

「秋月、清流。バラの品種ね」
「君もね、白銀うららさん」
うちへ修行に来た彼は、眼元が父に似ていた。
せいりゅう――同じ音。白銀清流。清々しい綺麗な響き。
思っただけで実現しなかった。方向が合わない事を、多分お互い察していた。長い友人期間を経て、それぞれ伴侶を得た。

私の夫は、年上のくせに私より子供で、けれど辛抱強く優しい。父の代から傍にいてくれた、青いバラならぬ、青い鳥。
幻より、目の前の笑顔。父の言葉が、今は心から解る。
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公開:18/12/15 01:22
更新:19/03/03 18:54

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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