赤ちゃんの吐息~フラワーネットワーク・アナザー①

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ベイビーズブレス――霞草の別名を教えてくれたのは、修行先の花屋の娘さんだった。
「秋月、清流。バラの品種ね」
「君もね、白銀うららさん」
そんな会話で笑った彼女は、まさに大輪のバラだった。
当時は添え物に近かった小花を、以来好きになった。長い付き合いに、友人から進展しそうな時期もあったが、僕は用意された席に座るのが嫌だったし、花同士の様に寄り添えない事も、多分互いに察していた。

独立した僕は、店に『花霞』と付けた。
「品種繋がりね」
「ああ。好きなんだ」
踏み込むまいと決めた。確証はないが、彼女も同じだと思った。

「秋月、清流。バラの品種ですね」
「ええ。店名もバラから取りました」
「奇遇ですね。私の名前、舞です」
そう言って笑った彼女は、バラより霞草に見えた。
結婚した時、墓まで持って行くと決めた。


腕の中に命を抱いた時、トゲは完全に消えた。
僕の小さな花達を、生涯護ると誓った。
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公開:18/12/15 00:00
更新:19/03/03 18:51

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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