親父の背毛

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寝たきりになってもう数年になる、うちの親父の体を拭いていたら、背中に恐ろしく長い毛を見つけた。なんと金髪だ。
興味本位で引っ張ってみるとズルーと毛が出てきた。手を離すと毛はピュルピュルと体内に戻っていく。
と同時にいきなり親父がおかしな声で
「おめぇは俺の相棒だぜ
!」
と声を出した。驚いてもう一度毛を引っ張る。
「俺のパンツにゃガラガラヘビ!」
下ネタか?
「この家に俺たち二人が住むには狭すぎるぜ」
「恥を捨てろ!手を上げな」
(どっかで聞いたような台詞だな)面白くなり何回も毛を引っ張ってると壊れたレコードみたいに
「おめぇは俺の相棒だぜ」しか言わなくなった。
「くそっ」
思いっきり引っ張るとブチッと毛がちぎれシュルシュルと体内に入り見えなくなった。
「あー」
親父はいつもの無口な寝たきりに戻った。
しかし時々思い出したように。
「おめぇは俺の相棒だぜ」
と言う。
ちょっと嬉しい。
その他
公開:18/12/14 20:57
更新:18/12/15 00:02
毛祭 のりさん宿題

むう( 地獄 )

人間界で書いたり読んだりしてる骸骨。白むうと黒むうがいます。読書、音楽、舞台、昆虫が好き。松尾スズキと大人計画を愛する。ショートショートマガジン『ベリショーズ 』編集。そるとばたあ@ことば遊びのマネージャー。

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