ノート

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マリさんは泥棒だ。
ある夕方、マリさんがノートを持ち帰った。誰かが学校で使っていた角が潰れて丸まったノート。
開くと中学生が数学の勉強をしていたものらしい。ページの右下に小さな絵が描かれている。次のページも、その次のページにも。
ページの角の絵は、パラパラマンガで、魔法使いが爆発した星から飛び出してほかの星に辿り着く話になっていた。
星屑で魔法使いの腕が傷ついたり、細かいところまで書き込まれていて、僕は視点を変えながら何度もパラパラ見返した。
でも、マリさんのお目当は、このマンガではなかったらしい。この数学のノートのどこかに、大切な暗号が隠されているのだと。
暗号を見つけたら、何が起こるのだろう。
「それは秘密でしょ」
中学生のノート。
依頼主は誰だろう?
僕は自分の中学時代を思い出して、知らないうちに苦くて甘い笑いを口元に噛んでいた。
ファンタジー
公開:18/12/14 16:43
更新:18/12/15 14:38

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