枇杷の独り言

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私は君に生かされた。気まぐれで庭に埋めた君は、私の芽吹きに色めき立つ。
「お母さん、でた!」
誕生を祝福されながら庇護され、名前をつけられ、適切な水や身の回りの世話を受けた。それが当然でないと気づく頃には、私は君をとっくに追い越していた。毎年のように枇杷をもいで食べていた君は、独り言のように呟いた。
「来年は食べれないな……」
次の年、君は来なくなった。お母さんは来てくれていたけど、随分歳をとった。私の実は小鳥や烏が食べに来た。遠くで私の種が芽吹く。でも私にとってはこの小鳥や烏、根のモグラ居眠り猫。そして君たちが家族だ。
久しぶりに来た君は、歳をとり子どもを連れて来てくれた。黒い服に物憂げな横顔。それから笑ってくれた。
「また、一緒だね。新しい家族だよ、よろしくね」
君にそっくりな新しい人間、小さくて愛らしいね。ようこそ世界へ。私は君のお父さんの、小さい頃を知っている。甘い実を約束しよう。
ファンタジー
公開:18/12/14 14:52
更新:18/12/14 17:34
家族

風月堂( 札幌 )

400文字の面白さに惹かれて始めました!
文字や詩のようなものを書くのが趣味です。
情緒不安定気味でアゲサゲ落差のひどい人間ですw
いろんな方々の作品を読んで、心を豊かにしていきたいです。

無料の電子書籍をつくりました。
『ショートショート作品集カプセルホテル【】SPACE』
a.co/1VIyjHz

『枇杷の独り言』
ショートショートコンテスト『家族』最優秀賞頂きました。

写真は全て自前でやっています(笑)

こちらで写真を紹介、ハガキにと販売しております!
https://minne.com/@sakoyama0705  - ハンドメイドマーケットminne(ミンネ)

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