家族
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「ほら、大人しくして」
家には無い畳が珍しいのか、目に沿って指の腹を滑らせて遊ぶ幼い弟がきゃっと笑い声をあげる。小学生の妹は片隅でバラエティーか何かを流すテレビに目を向けていて、それから三つ程年の離れたもう一人の弟は、さっき買ってきたお菓子を取り出そうとビニール袋を机にひっくり返していた。
祖母が死んだ。血の繋がりは無かった。顔も名前も知らない参列者を横目に、式場に来て早々私は弟妹を連れてこの別室に入った。十九歳の私は喪服なんぞ持っておらず、どうか義父とは会わずに済むようにと出来合いで買ってきた数珠を握り締め、袱紗とあと何かハンカチでも詰めてきたビジネスバッグを空いた左手に提げていた。
一応家族なんだから、と母親に諌められた。少しは悲しそうな顔をしろと言いたいのだろうが、遅れてきた反抗期真っ最中の私には到底届かぬ声である。障子越しに聞こえてくるお経がくすぐったくて、私も畳で遊ぶのだ。
家には無い畳が珍しいのか、目に沿って指の腹を滑らせて遊ぶ幼い弟がきゃっと笑い声をあげる。小学生の妹は片隅でバラエティーか何かを流すテレビに目を向けていて、それから三つ程年の離れたもう一人の弟は、さっき買ってきたお菓子を取り出そうとビニール袋を机にひっくり返していた。
祖母が死んだ。血の繋がりは無かった。顔も名前も知らない参列者を横目に、式場に来て早々私は弟妹を連れてこの別室に入った。十九歳の私は喪服なんぞ持っておらず、どうか義父とは会わずに済むようにと出来合いで買ってきた数珠を握り締め、袱紗とあと何かハンカチでも詰めてきたビジネスバッグを空いた左手に提げていた。
一応家族なんだから、と母親に諌められた。少しは悲しそうな顔をしろと言いたいのだろうが、遅れてきた反抗期真っ最中の私には到底届かぬ声である。障子越しに聞こえてくるお経がくすぐったくて、私も畳で遊ぶのだ。
その他
公開:18/12/14 13:27
更新:18/12/14 13:28
更新:18/12/14 13:28
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