お墓、貸します

遊び半分のような気持ちで始めた商売が、軌道に乗った。
賃貸墓地サービス。
その名の通り、墓を貸すのだ。料金は前払い。遺骨を埋めた後、その額に応じた期間だけ名札をつける。半年だったり、一年だったり。期間が終了すれば名札は焼却して廃棄、次の人の名を掛ける。
表向きは、核家族化により墓地の面積が増えすぎることや、親族から縁の絶えた人への対策としている。だが、実際には、余っている墓の活用のためだ。
「お墓を借りられるって本当ですか」
新聞広告にこっそり載せてみると、そんな電話が相次いでかかってきた。冷やかしが過半数だったが、中には真面目なものもあった。
正直、こんなに需要があるのか、と驚いた。だが、孤独死なんかの報道も絶えない世の中だ。死後に誰と土の中で共にしようと、頓着しないのはある種の普通なのかもしれない。
明日にはまた、新しい骨が入る。
名札を燃やすのは、少しだけ虚しくなる。