酔っぱらいの話

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「パンドラの箱、って話を知っているかい?」
隣の席の男が急に話しかけてきた。
酔っていたこともあり、私は気軽に応えた。
「知ってますよ、すべての悪と災厄を詰め込んだ箱を神様がパンドラという娘に渡し、絶対に開けてはいけないと言われつつ、好奇心から開けてしまい、世の中に悪と災厄が放たれた。でも、最後には希望が残った…というものですよね」
彼は赤い顔で更に問いを投げてきた。
「おかしいとは思わないか」
「ありふれたお伽話ですよね」
私はその話の何がおかしいかわからずに困惑する。彼は言い放った。
「パンドラの箱とは、すべての悪と災厄を詰め込んだ箱なんだ。
「つまり、希望とは災厄なんだよ。甘い顔で、さも気があるように人間にすり寄って来て、次の瞬間には離れて絶望に突き落とす…希望とは災厄なんだよ」
そう言って彼はグラスを空けた。
その他
公開:18/12/15 10:22
更新:18/12/15 10:23

AlterLowe( 噂の集まる夏の夜 )

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