お花見アーケード

「Insert Coin(s).」の代わりに「Insert Seed(s).」と明滅する画面。
「おっちゃん、タネをいれたらあかんのん？」
「なにゆうてんねん。ノリやノリ。タネなんか入れたら、機械こわれてまうがな」

寂れた商店街の片隅。
花屋の横に、そのゲームセンターはあった。
ところ狭しとアーケードゲームが並んでいる。
花の種や花や植木鉢を持ってくると、コインと交換してもらえる。
そのコインでゲームができる。

「横入りすんな」
「ちゃんと後ろに並びや」
カウンター前は子どもたちでごった返していた。
大事そうにタネをにぎりしめた子や、植木鉢を抱えた子。

主人は次々、列をさばいていく。
「これ、街のホームセンターで買うてきてやろ」
「こっちは自分で育ててへんやろ。おかんが水やりしてんの、みたで」
「ふわぁ〜。ようこんだけ育てたな。大変やったろ」
「何色の花が咲くんやろなぁ」