かみなりと青年

僕は人間から、かみなりという名前で呼ばれている。
ある日、人間の頭の上に落ちてしまった。
けれど、不思議なことに彼は無傷で、僕も、彼の体の中で生き続けていた。

人間が食事するのと同じように、僕は街の灯りを食べる。
かみなりが落ちて停電って言うのがよくあるけど、あれは僕たちが食事をしている証拠だ。

だから僕も彼に頼み込んで、街の灯りをこっそり、停電しない程度に食べさせてもらっている。

季節は冬。街はライトアップされて
色々な灯りを楽しめる。もちろん、食事を楽しむという意味。

冬の夜は、至るところでちょっとずつ灯りを試食しては回っている。

一つ気付いたことがある。
食べる場所によって、灯りの温度が変わる。
家族連れとか恋人たちがいるような場所の灯りはとても温かくて満足感がある。

その事を彼に話すと、「それ俺に言う？」と口をへの字にした。
それから、まあいいや。と呆れたように笑った。