トリック・オア・東京メトロ

東京メトロに乗っていると、ご老人たちが大声で叫んでいた。
何事だ、と耳をすます。

「トリック・オア・東京メトロ！」
「トリック・オア・東京メトロ！」

フガフガ言っていて聞き取りにくいが、どうやらそう言っているらしい。
真意がつかめないが、元気そうで何より、だ。
と、その時、ひとりのご老人と目が合ってしまった。こちらをギロッと睨んでいる。なかなかの眼光の鋭さだ。

「トリック・オア・東京メトロ！」

そう言われても困る。地味に僕の足を杖で小突くのやめてくれ。

「トリック・オア・東京メトロ！！」

何故か標的にされてしまったようだ。今度はパタパタと僕の顔を煽いできた。お線香の香りがキツイ。
これは深く関わらない方が良いぞ、と思った僕は席を立った。
すぐさま、ご老人が開いた席に座った。
そこでピンときた。

トリック・オア・東京メトロ。
意味は……。
席を譲ってくれなきゃ、イタズラするぞ！