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朝、洗面台の前に立つ。寝ぼけ眼で鏡を見ると、一本の鼻毛が伸びていた。定期的に手入れはしているから、それを掻い潜った猛者がいたのだろう。指先で摘んで引っこ抜くと、予想以上の痛みに涙が溢れた。抜けた鼻毛を見て私は驚く。長い。長すぎる。鼻の長さを凌駕している。この長さは私史上初だ。毛根の謎の粘着力を利用して指先に乗せると、逞しい鼻毛が直立不動で立った。驚くべきは針のように尖った毛先だ。ハサミに身を削られる事なく真っ直ぐに伸びたその姿は、凛々しく、誇り高い。私はその人生、いや鼻毛生に憧れずにはいられない。不幸にも今日、その鼻毛生は幕を閉じた訳だが、その生き様は沢山の人に賞賛されるべきだ。群馬県前橋市鼻毛石町で開催される鼻毛品評会で金賞を狙えるかもしれない。
いや、私の鼻の中には、まだ未知なる鼻毛が眠っているのではないか…。
鼻の穴に指を突っ込む。
思わず出たクシャミで指先の鼻毛が吹き飛んで消えた。
いや、私の鼻の中には、まだ未知なる鼻毛が眠っているのではないか…。
鼻の穴に指を突っ込む。
思わず出たクシャミで指先の鼻毛が吹き飛んで消えた。
その他
公開:18/12/13 12:49
そんな品評会はありません
月の音色リスナーです。
ようやく300作に到達しました。ここまで続けられたのは、田丸先生と、大原さやかさんと、ここで出会えた皆さんのおかげです。月の文学館は通算24回採用。これからも楽しいお話を作っていきます。皆さんよろしくお願いします。
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