電気屋のわたがし

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「お嬢ちゃん、ひと口どうだい?」

イルミネーションに染まった街の電気屋で、店頭販売をしているおじさんが私を手招きした。のぼりには、『わたがし』と大きく書いてある。
けれどおじさんの前の台には電球がひとつ上向きに立ててあるだけで、わたがしの機械はどこにもなかった。
私が首をかしげると、おじさんは嬉しそうににやりとして電球をつけた。そうして明るくなった電球の周りで棒をくるくると何周か回すと、電球のあかりが棒に巻きつくように絡み始めたのだ。
「はいどうぞ」
おためしね、とおじさんがくれた小さなあかりのわたがしは、ぼんわりと柔らかく光っている。
口に入れると口の中がほんわり温かくなって、飲み込むと身体もぽかぽかした。
「今はなんでもLEDが主流だけど、白熱電球は味があって美味いんだよ」

辺りを見回すと、たくさんの木が色とりどりに輝いて、それに呼応するように、私の身体も少しだけ、柔らかく光った。
その他
公開:18/12/13 22:28
更新:18/12/14 22:03
スクー ライトアップ試食

ゆた

高野ユタというものでもあります。
幻想あたたか系、シュール系を書くのが好きです。

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