流星のしずく

8
13

私が幼い頃に母は亡くなった。
「ママはお星様になって、いつでもお前を見守ってるよ」
父は事あるごとに私にそう言った。そのせいか、私は夜空を見上げて星に話しかける癖がついた。
「パパに怒られちゃった」
「遠足行きたくない」
「よっちゃんと仲直りしたい」
星空は何も答えてはくれなかった。
満天の星を見上げて、ふうっと息を吐いて目を閉じると、体から魂が抜け出して、夜空に吸い込まれるような気がした。母の温もりを感じながら、ふわふわと夜間遊泳を楽しむと心がスッキリ落ち着いた。いつでも母は側にいる。そんな気がして寂しくはなかった。母に見られても恥ずかしくないよう、私は日々を過ごした。
やがて大人になった私は、一人の男性と出会った。彼のプロポーズに応えた夜、星空はいつもより眩しく見えた。
「お母さん、私、結婚するね」

おめでとう…

声が聞こえた気がした。
母の涙がひとしずく。
流れ星となって零れた。
ファンタジー
公開:18/12/11 23:17

のりてるぴか( ちばけん )

月の音色リスナーです。
ようやく300作に到達しました。ここまで続けられたのは、田丸先生と、大原さやかさんと、ここで出会えた皆さんのおかげです。月の文学館は通算24回採用。これからも楽しいお話を作っていきます。皆さんよろしくお願いします。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容