贈り物

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マリさんは泥棒だ。
その日、マリさんは小さな手鏡を持ち帰った。それは、ずっと前に鎌倉で買われた、渡されることのなかったお土産だという。鏡の背に蓮の花が彫られている。
「ずっと渡せないでいるのが苦しいから、盗んでくれって言われたんだ。そんなことなら、あげちゃえばいいのにね」
マリさんは鏡を覗き込む。汚れのない、つるつるの表面。そこに空や川を映す。
一瞬、見知らぬ人影が鏡の中をかすめて通った。
本当に映されるべき人の姿が陽炎になって現れたのか。
ファンタジー
公開:18/12/10 22:13
更新:18/12/11 21:12

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