僕らのスーパーヒーロー

今日は、サークルの演劇本番の日。商店街の皆さんにご協力いただき、街の広場で公演する。監督の僕は観客の皆様に挨拶を済ませて段を降りる。さあ、ついに開幕だ！のっけから敵が攻めてくる、熱い始まり方だ。
『ここか、玉琉マンの新しいアジトは！』
『いないぞ、探せ！さっきまでいたはずだ！』
『ああ、ここに食べかけのカツ丼がある。なんていい匂いだ。トロトロに柔らかい玉ねぎがカリカリのカツに絡んでやがるぜ』
『吉田屋さんの新メニューじゃないか！』
『このボリュームで500円！』
「な、なあ。こんな台詞あったか？」
脚本家に聞くと彼は目を細めた。
「スポンサーからのお達しでさ、ついでに商店街おすすめしてくれって」
『俺を探しているのか』
主役の手には鯖バーガーが握られている。
『磯貝水産店の鯖は揚げたてに限る』
『うらやま、小癪な！お前たちやれ！』
展開は遅々として進まないが、観客達は涎を垂らして観ていた。