富と貧しさ

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今日も町工場での作業を終え家に帰る。道すがら家々から流れてくる夕食の香りを楽しむ。
おっ!田中のところはカレーか。吉岡さんはハンバーグ。そういえば今日、息子さんの誕生日だって言っていたっけ。
この町は決して裕福ではない。皆が縁の下の力持ちで地味な仕事ばかりしている。
この町を蟻の巣と揶揄する者もいるが、そんなことで怒る者はこの町にいない。
「ただいま」
「おかえりなさい。今日は貴方の好きなモヤシ炒めよ」
家に帰ると町長である妻が出迎えてくれた。我が家はこの町一番の貧乏だ。
それもそのはず。僕の妻は貧乏神だ。働けども働けども暮らしは楽にならない。
だが妻と沢山の子供達に囲まれる日々は幸福だ。
かつて僕は大手企業で働き、収入も多かった。反面、心が貧しかった。
そんな時に出会ったのが彼女だ。僕は金で買えない心の富を手に入れた。
この町はそんな貧乏神と共にある。
だから貧乏なんてへっちゃらなのさ。
公開:18/12/12 19:26

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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