アイシテル

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彼女は僕を愛していなかった。本命の男がミュージシャンで、僕はそいつの代わりに働かされる毎日だった。
僕がそれを知ったのはたまたま早く家に帰った時の事だ。彼女は本命の男とイチャつきながら楽しそうしていた。それを見た僕は目の前が真っ暗になった。
気が付けばギターで男を殴り殺していた。彼女も同様に殴っていたようだ。虫の息で「愛しているわ…助けて…」と呟く。僕はギターが壊れるまで彼女を殴った。

その日からだ。アイシテル。その言葉が耳から離れない。どこにいても彼女の声が聞こえてくる。
耳を澄ませてみると声は必ず排水溝からしてくる。
彼女をバラバラにして流した排水溝だ。そこには彼女の口があった。ああ、彼女はここから呟いていたのか。
よく見ると蛇口には目がついている。彼女は三角コーナーから手を伸ばし、僕の頬を撫でる。
アイシテル。
僕は彼女と口づけした。
彼女の口づけは生臭かったが僕はとても幸せだ。
ホラー
公開:18/12/12 19:09

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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