カーデン（夏）

家に帰ってきた。
肩に掛けていた鞄を下ろし、数日前に引っ張り出したばかりの冬物のコートを脱ぐ。
玄関に入る前に、ある程度雪は払い落としたけれど、それでも落ちきらなかったものがコートに染み込んでいく。
ちゃんと乾かしておかないと。と思いながら、部屋着に着替える。
冷蔵庫の中から発泡酒を持ち出し、庭に出る。
ガラスの引き戸を開けると、風と一緒にカーテンが巻き上がった。
カーテンの先は夏だった。

ある雑貨屋さんで見つけたカーテン。四種類あって、それぞれに四季の動植物をモチーフにした刺繍が施されている。これを付けると、カーテンの先の空間だけ季節が変わるのだ。夏のカーテンは夏になる。

冬との温度差で暑いのか寒いのかよく分からなくなるが、これはこれで面白い。
庭の中でふわふわ飛び交う蛍と、その外で降り積もる雪の淡い光のコントラストが、現実ではあり得ない幻想的な空間を作り出した。