おそうしき

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マリさんは泥棒だ。
マリさんの友だちの亀が死んでしばらくしたある日、
「お葬式をしたい」
とマリさんが言い出した。
「大切なひとが亡くなったらお葬式をするんでしょ?お葬式ってなに?」
僕は何気なしにこたえた。
「死んでしまったひとの事を思い出して、いい一生だったなぁ、安らかに眠れ、とお別れをするのがお葬式だよ」
すると
「安らかに眠れ?死んだら眠るの?」
ときた。
「死んだら天国で眠ってるんだと思うよ」
マリさんは天国がどこにあるのか確認して、何かを確信した。そして、出掛けてしまった。
ある長閑な午後、窓の外から光が射した。僕の部屋のバルコニーに雲の切れ間から射す光、天使の梯子が掛かっていた。
「海から盗んで来たよ。これからちょっと天国まで行ってくる」
僕はマリさんの腕を掴んで声をあげた。
「ダメ!ダメ!生きてる人間が天国に行ったら死んでるひとを起こすから!」
ファンタジー
公開:18/12/11 23:22
更新:18/12/11 23:24

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