娘の誕生日

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銀行員ならみんな知っているかもしれないが、銀行はその日一日の勘定が1円でも合わないと全員が帰れない。

東京23区内から少し離れたこの田舎の支店でも例外ではない。


「今日は娘の誕生日。なんとかはやく合わないものか。」

もうすぐ30になる課長代理の神崎は神に祈るようなつもりで天を仰いだ。


「神崎さん、支店長がお呼びです」。急ぎ足で部下の女性行員が駆け寄ってくる。

もしかして勘定の合わない原因が分かったのか。足早に支店長のところに向かう。


「俺だった・・・・・・」


そういえば今日の娘の誕生日で頭がいっぱいで承認していない取引がひとつあったのを思い出した。


皆の刺すような視線がとても痛いが、むしろ気持ちいいくらいだ。
これで娘の誕生日に間に合う。


始末書はその日の午前0時を回ったところでようやく書き終わった。

ハッピーバースデー。
ミステリー・推理
公開:18/12/09 11:26
更新:18/12/09 11:50

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