合唱家族
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「うちのおじいちゃんさ、百歳のお祝いに合唱してほしいんだって。家族全員で」
「全員って、ひ孫までいれたらかなりの人数だぞ」
「うん。冗談かと思ったら本気らしいの。どうしようかしらね。耳もほとんど聞こえてないっていうのに」
妻からこの話があったのが三年前。まさか練習の成果を見せるのが、葬儀の場になろうとは思わなかった。
「導師の入場です。合掌を」というアナウンスに、まず叔母さんが、つぎに隣の叔父さんが、さらに大勢の孫やひ孫たちも高らかに歌い出した。
かなりの出来栄え。でも、この歌を聴いてもらうには、亡くなるしかなかったのかもな、などと感傷に浸っていたら、なんと拍手が、前方の棺から聞こえてくるではないか。
家族全員、息を飲んで祭壇を見やる。すると、導師が手を叩きながら、ゆっくりと振り返った。
急に力が抜けて、大笑い。そんな様子を、遺影のおじいさんは、えらい満足そうに眺めていた。
「全員って、ひ孫までいれたらかなりの人数だぞ」
「うん。冗談かと思ったら本気らしいの。どうしようかしらね。耳もほとんど聞こえてないっていうのに」
妻からこの話があったのが三年前。まさか練習の成果を見せるのが、葬儀の場になろうとは思わなかった。
「導師の入場です。合掌を」というアナウンスに、まず叔母さんが、つぎに隣の叔父さんが、さらに大勢の孫やひ孫たちも高らかに歌い出した。
かなりの出来栄え。でも、この歌を聴いてもらうには、亡くなるしかなかったのかもな、などと感傷に浸っていたら、なんと拍手が、前方の棺から聞こえてくるではないか。
家族全員、息を飲んで祭壇を見やる。すると、導師が手を叩きながら、ゆっくりと振り返った。
急に力が抜けて、大笑い。そんな様子を、遺影のおじいさんは、えらい満足そうに眺めていた。
その他
公開:18/12/08 23:00
更新:18/12/14 21:53
更新:18/12/14 21:53
400字って面白いですね。もっと上手く詰め込めるよう、日々精進しております。
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