砂時計

8
7

さら、さら、さら。
こぼれ落ちて行く。毎日少しずつ。

「今日、休みか」
「うん、休みだよ」
「そうか、良かったなぁ」

小さい頃から可愛がってくれた。
母は弟の世話に忙しく、育ての親も同然だった。
大好きなお婆ちゃん。

「今日、休みか」
「うん、休みだよ」
「そうか、良かったなぁ」

最近、一緒に出歩かなくなった。
前は食事や買い物に行ったのに。
さら、さら、さら。乾いた砂の音がする。

「今日、休みか」
「うん、休みだよ」
「そうか、良かったなぁ」

さら、さら、さら。
こぼれ落ちて行く。毎日毎日毎日。
横に伏せても繰り返す、三分ごとの砂時計。

大好きだったお婆ちゃん。
どうか解って。私は怖いよ。
もう私の映らない、貴方の虚空を直視する事。
私の「大好き」をこれ以上粉々にしないで。

さら、さら、さら。
最後の砂が落ちるのに、あとどれだけあるだろう。

「今日、休みか」
――さら。
ホラー
公開:18/12/08 11:25

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
https://amzn.to/32W8iRO

ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容