ＢＡＢＥＬ

呼吸の様に文字を吸い　言葉を吐く
息の音は　幾千万の句と閃きと刹那の忘我で出来ている

指が感情思考の迸りに任せて駆け巡る時
私は原紙の虚ろに魂の剥片を積み上げて蜃気楼を構え
白い升目と線の夢幻に耽溺する
酩酊する
漂泊する
逸脱する
融解する
私で有って私で無いモノになる
出逢えてしまった幸せと　出遭ってしまった不幸を抱き
私は世界と自己の境界を取り払う

誰にも成れる
何処へも行ける
何だって創れる
そうと信じないで　どうして生きて行かれよう
傲慢と独善と欺瞞の十字を負い　どうして生きて行かれよう　
築く縁から崩れ落ちる一つ一つを拾い
私はくしゃくしゃに波打つ紙切れの空へ垂直を架ける

呼吸の様に言葉を吸い　文字を吐く
この体は　幾千億の詞と囁きと無限の狂気で出来ている