大家族

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 ベッドの上、祖父は静かに横たわっていた。
 ピッ、ピッ、ピッ。
 心電図の音だけが響く。
 ピーッ。
 医師が両眼を調べ、聴診器をあて、そして、最後に腕時計を確認した。
「ご臨終です」
 頭を下げて、医師は部屋を出て行った。
 すぐに枕元に置いていた小型アンドロイドが上半身を起こした。
「こら、お前たち、人が死んだのに泣きもしないのか」
「だって、おじいちゃん、死んだ感じがしないんだもん」
 死亡と同時に人格がアンドロイドにコピーされる時代、わたしは家族を失ったことがない。
「そりゃあ、わしだって、死んだ気はしないが、こんな小さな体になったんだぞ」
「すみません、大きな体を買うほどの余裕がなくて」
 父が頭を下げた。
「家族が多いから、仕方ないでしょ。さ、家に帰りましょう」
 曽祖母の言葉にわたしはおじいちゃんのアンドロイドを家族のアンドロイドがぎっしり詰まったカートに乗せた。
SF
公開:18/12/09 15:48

田辺 ふみ

名作絵画ショートショートコンテストで「復元師」が太田忠司賞を受賞しました。
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「ショートショートの花束」8と9にものっていますので、よろしく。
 

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