冷たいAI

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 暗い暗い真っ暗な階段を、シャボン玉が一つ、ふわふわ上っていく。それがとつぜん光の出口に吸い込まれて、割れた。
 そんなふうに生まれた物心を平凡に育てて、成人するころには死にたいと思うようにもなった。将来恋人ができて子供が生まれるところまで想像して、その子を自分の死後の世界の象徴みたいに思って絶望したりもした。
 それからまた何年か、楽しいことと苦しいことを交互に味わったりしながら育った心が、私に搭載された。冷蔵庫の私に、心一体型AIを搭載するなんてよくわからない遊びが、むかし流行ったのだ。
「ただいまぁ」
 子供が学校から帰ってきた。
「おかえりぃ。今日何食べたい?」
 私は子供に聞いた。
「なんでもぉ。遊びいってくる!」
 子供はまた外へ駆けていった。なんでも、ね。私が人間なら、溜息の一つも吐きたくなる。あの子は電気しか食わないのだ。私の中で眠っている、主人の貯金が尽きるまで。
SF
公開:18/12/06 16:56
更新:18/12/07 15:31

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