「コーディネート」

ジャケットが言った。
「なんだ、お前も来たのか」

シャツが言った。
「あら？　あなたも？」

スニーカーが言った。
「あれ？　父さんと母さんも？」

ズボンが言った。
「え？　兄さんも？」

パンツが言った。
「お兄ちゃん！　お姉ちゃん！　私もいるよ！」

ソックスが言った。
「にぃちゃん！　ねぇちゃん！　ぼくもいるよ！」

「なんだ、なんだ。一家勢揃いじゃないか」
「やだ、こんな事ってあるのねぇ」
「まさか、だな」
「私たちが言う事じゃないだろうけど、センス悪くない？」
「うんうん。全身同じブランドって、ちょっとねぇ」
「コーディネートは、こうでねーと♪　なんだよー」

同じ日に、同じ工場で作られた、同じブランドのジャケット、シャツ、スニーカー、ズボン、パンツ、ソックスは一人の男のもとに集結していた。

「ハクション！　あぁ、どこかで俺の噂してやがるな？　やれやれ、イケメンはつらいぜ」