手紙

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マリさんは泥棒だ。
マリさんが郵便局というものを知った。昨日、初めて気がついたらしい。
僕は郵便局の仕事について説明した。するとモスクワの友達に手紙を送りたいとマリさんは言った。
でも、手紙の書き方がわからなくて、その夜郵便局から手紙を盗んで来た。真似をするために。
「開けちゃダメだよ。受け取る人の為だけに書かれたんだから」
そう言うと、マリさんは明かりに透かしたり斜めにしたりして中を見ようとした。
結局、マリさんは小包みに東京の風を詰めて送った。便箋には斜めになった文字でサインをして。
「物ばかり扱ってきたから、言葉のことなんてわからないよ」
僕は本を貸した。そして、どこからか自分の気持ちにあった言葉を見つけて書き出していた。
ファンタジー
公開:18/12/07 17:06

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