朝もやの中、自転車を漕ぐ。

弟に負けるのは嫌だった。
弟が背の高いのはいい。気づいたらいつも上から見上げてたから。
でも、自転車は嫌だった。
弟はすぐ乗れた。
あたしはすぐ転んだ。
何度も跨ってペダルを必死に漕いだ。でもダメだ、横に倒れる。
弟の自転車は横にならないで、ずっと回ってる。
ぐるぐる
あたしの自転車が悪いのか、どうして出来ないのか、、
とても悔しいしこのままじゃ大人になれないかも。
何度も転んだ。けど痛くない。

美紀が自転車の練習をしてる。運動音痴だから智司はすぐ自転車に乗れたが美紀は乗れなかった。負けず嫌いなのかいつもお喋りなのに、黙って練習してる。そして帰って来ても無口だった。今日もそっと朝起きて出て行った。公園で練習している。怖がりでどうしてもペダルをずっと漕ぐことができない。私は出て行った美紀を追うのでパジャマにカーディガンを羽織った格好で声をかけずに見つめた。公園の滑り台と美紀の姿が滲む。