Frozen memories

今日は一人でやけ酒だ。数日前、取引先を怒らせた。おかげで土下座するという失態を演じ、それを見ていた職場の彼女から『冷めた』というラインが届いた。あれからいくらメッセージを送っても既読がつかない。と思えば今日、同僚の遠藤と腕を組んでいる現場を見てしまった。俺は6缶500mlビールを買って部屋で一人飲んでいた。
（子どもの頃に帰りたい）
根拠もなく自信のあったあの頃に。失敗しても守ってもらえたあの頃に。優しく慰めてくれる人がいたあの頃に。
ビールを取りに冷蔵庫まで行く。開けると中から光が漏れた。俺は目を疑う。そこは小学校だ。俺が作文を読み上げている。懐かしい級友たちだ。親友もいる。元気だった頃の先生が、母が笑ってる。
「おいで」
俺は嬉しくなり、中に入った。

パタン、と音がした。誰もいない部屋でヴンと冷蔵庫が起動音を鳴らした。ビールの缶から汗が垂れる。それだけの空っぽの部屋が取り残された。