言葉の格闘技

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取調室。
コンクリートの壁に囲まれた部屋の中で、一人の容疑者と二人の刑事が対に座っている。
「お前が三人の被害者を殺害したんだな」
三人の被害者のそれぞれの顔写真を事務用のテーブルの上に並べる。
「証拠は?証拠はどこにあるんだ?」
容疑者は、濁った太い声できいた。
二人の刑事は顔を苦ませた。
「証拠は今調べている最中だ。お前が口を割ればいいだけの話しだろ」
容疑者は高笑いをする。
「絶対に凶器は見つからない。なにせ、俺の凶器はこの口だからな。馬鹿な切れ者は直ぐに凶器を使うが、理知に富む俺の場合、一切手を加えずに殺害する」
容疑者は薄ら笑みを浮かべる。
「さあ。いくらでも調べてくれ。俺は何も抵抗しない。刑事が俺が犯人であるという証拠を見つけてくれ。さあ」
容疑者は大きく手を広げる。
言葉は時として、凶器となり、それは目に見えないものである。
その他
公開:18/12/05 00:00

神代博志( グスク )









 

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