あげつら湯

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とある露天風呂。子どもがタオルで風船を作ろうと頑張っている。たどたどしさが可愛くて、周りの大人たちは微笑ましく見ていたのだが…。

「ぼうず!タオルを湯船に入れるんじゃねえ!」

腕にタトゥのハードロッカーが、おっぴろげに入ってきて、周りの大人たちを睥睨。皆が目をそらすなか…。

「長い髪は束ねてほしいものですねえ」

威厳に満ちた声をあげたのは、最年長と思しき老人。ロン毛のロッカーと対照的に、自身の毛髪はもちろん残っていない。

と、なりゆきをじっと見ていたタオルの子どもが、ここで何かに気がついた。

「つぎ僕ね。おじいさん。股のもじゃもじゃは駄目だと思うよ」

子どもが立ち上がり、誇らしげに腰を突き出すもんだから、ロッカーは思わず吹き出して…。

「やるな、ぼうず。また俺の番か。お前が出来てないことっていや…」

ロッカーは湯にタオルをそっと浮かべ…、ものの見事な風船をつくってみせた。
その他
公開:18/12/04 22:20

糸太

400字って面白いですね。もっと上手く詰め込めるよう、日々精進しております。

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