海と舟

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私は浜辺を背にし、一歩一歩遠い海原へと進んでいき、身体を海へと沈めていく。
もう昨日へは戻らないとそう心に決めて・・・

時間を忘れて、海を掻き分け進んでいく。
腕に巻き付けた腕時計の針はとうの昔に壊れていて、すでに時が乱れていた。

身体が冷たい。
夜の海は冷凍庫の中よりも冷たい。

私の遠い彼方では、静寂な空に黒い太陽が浮かんでいた。
怪しげな光を放ち、輪郭を隠していた。

私の横を小さな舟が横切った。
三角の木箱には船主と一人の南京錠をはめた乗客が乗っていた。

「乗っていくかい?」
船主はオールで漕ぐのをやめて、私にきいた。

私ははっとする。

どうして私はここにいるのだろうか・・・
なぜ、手持ち無沙汰な地平線を追いかけていたのだろうか・・・

私が言葉を発しないでいると、その船主は再び舟を漕いだ。

この海はいつまでも暗く、誰の目にも映らない。
ミステリー・推理
公開:18/12/05 23:18

神代博志( グスク )









 

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