ガラガラガラ

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 女は、大量の資料を抱えて、従業員駐車場までの長い坂道を登った。深夜、街灯は切れかけていて辺りは暗い。
 一台の台車が、運転席側のドアの前にあった。木の板の四隅にコロがついているだけの、簡単なものだ。
 女がそれを後ろに蹴ると、ガラガラガラと数メートル下がって、台車は静止した。
 資料を抱えなおし、ドアを開けようとした女は、突然、両足首を強く握られた。
 ヒッ! と声を上げて後ずさろうとする女。だが、足は思うように動かせず、そのままバランスを崩した。
 すると、車の下からガラガラガラと、台車に仰向けに寝た男が、引きずり出されてきた。
 女は、資料も鞄も放り出して地面へ倒れ… いや、先程女が蹴った台車の上に、仰向けに倒れたのだった。
 ガラガラガラ。
 反動で台車が動き出す。女の両足首を掴んだ男の台車も一緒に。
 仰向けに連なる二人は、長い下り坂を、ガラガラガラと、猛スピードで下っていった。
その他
公開:18/12/05 10:05

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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