幻想動物見聞録・田巻の場合

これなんだと思います？猫の毛玉です。大きいでしょう。ブラッシングして抜けた毛で作るんですよ。猫の成長と一緒に大きくなるんです。まるでもう1匹いるみたいで愛着を持っていました。ええ、元気でしょう。私にもよくわかりません。初めは風か気のせいだと思っていたんですがね、猫が死んでからまるで猫の代わりだと言わんばかりに転がるんですよ。私が帰ってくると生前の猫がやっていたみたいに足元にじゃれついてきます。触るともふもふで暖かくて……どういうわけか生きている。ただの毛の塊のくせに。怖くないわけないでしょう、なんなんでしょうねこれは。何度湯船に埋めて毛を剥ぎ取って中身を見てやろうと思ったか。
けれど、それをすると私は一人になってしまう。喉を鳴らして眠るコレは、今や私の家族になってしまった。ねぇ、先生にはどう見えますか？コイツは生き物ですか？それとも私が……。
なんでもないです。まだ、夢を見ていたいから。