白昼夢

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湖に浸した鳥籠のような植物園で、それを見た。風が凪いだ夏の暑い日に、キノコ雲。数秒後、閃光と熱風が塊になって向かってくるのを見た。
ーー逃げなきゃ。
咄嗟に身を投げ出して、水に飛び込んだ。熱波が水面上で通り過ぎ、蒸発していく音がする。
ーー原爆だ。
放射能は、どうする?しかし、そんなものより光が怖かった。どこまでも灼きつくすような、虚無の白。先ほどまで穏やかに広がっていた夏の青空は?入道雲は?みんなの顔は、顔、顔……。
息ができない。でも光は嫌だ。体の奥から解けて蕩ける、全てを壊す、あの圧倒的な輝きだけは
魚にしてくれ。暗い水の中で、息を潜めて。
闇に逃して。どうか、どうか。

飛び起きて周りを見回す。膝枕をしてくれていた彼女が、目を丸くしていた。
「どうして泣いてるの?」
「いや……」
一瞬だけ自分がわからなくなったけれど、落ち着いた。
「大丈夫、ただの夢さ」
全てが壊れる、そんな夢。
SF
公開:18/12/04 00:54
夢日記から抜粋 疑似体験 舞台は長崎、晴天

風月堂( 札幌 )

400文字の面白さに惹かれて始めました!
文字や詩のようなものを書くのが趣味です。
情緒不安定気味でアゲサゲ落差のひどい人間ですw
いろんな方々の作品を読んで、心を豊かにしていきたいです。

無料の電子書籍をつくりました。
『ショートショート作品集カプセルホテル【】SPACE』
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『枇杷の独り言』
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写真は全て自前でやっています(笑)

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