家族になりたい。

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河川敷に捨てられていた僕を拾ってくれたのが母さんだ。
僕にとって母さんは一人だけなのに、ある日こんなことを言ってしまった。

「母さんが、本当の母さんだったらよかったのに」
「えっ……」

あのときの悲しそうな表情が忘れられない。

「本当の母さんって、なあに?」
その問いに僕は自棄になって吐き捨てた。
「だから、血のつながった母さんだよ!」

それ以来、母さんは夜になると机でごそごそしている。
気になってこっそり引出しを開けてみた。
出てきたのは一冊の本。

【すぐなれる! 吸血鬼入門】

「見た……わね?」
振り返ると母さんが立っていた。
「か、母さん」

有無を言わさず、僕の首筋に歯を突き立てた。
痛くはない。甘噛みだった。

噛み方がよかったのか僕は吸血鬼にはならなかった。

血のつながった、僕の本当の母さん。
僕の大好物のギョーザを作ろうとして、台所で失神してるあの人のことだよ。
その他
公開:18/12/03 21:55
更新:18/12/03 21:58

UBEBE

おっさんになりましたが、夢は追い続けます

「小説は短く、人生は永く」

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