ホンキとホンネ！

『来て！』とだけ書かれた、風景のポスターがある。
駅の壁に貼ってあった、福島県のその観光ポスターを撮ったスマホを、太一さんは同僚の武さんに見せた。
彼らは、居酒屋で軽く一杯やりながら、しゃべっている。
「なんか“本気”感が出てるね」と武さん。
「本音を言う方が、伝わるのかな...」太一さんは続けた。
「思い出したけど、」うなずいて、武さんは言う。「僕が子どもの頃にさ、家が靴屋さんの友達がいてね。そのお店の入口に、商品を置く台があって。そこにそいつが絵を描いたんだ。親に頼まれたらしくてネ」
「へぇ、どんな絵？」
「ウルトラマンと、怪獣が街で戦ってる絵。“フキダシ”で怪獣が『くつ、かってくれぇ～』と言ってる」
太一さんは笑った。「それこそ、本気じゃなくて“本音”だね」
「絵のせいじゃないだろうけど、数年後、閉店してしまってさ...」
太一さんは腕を組んだ。「本気と本音。線引きが難しいね！」