温もり

0
4

暖炉を燃え立つ炎の、暖かに揺らめく安楽椅子にすっかり身体を預けたまま、女は目を瞑る。
雪と一緒になって吹きつける風が、窓をがたがた鳴らす。
雪のような女の肌は、埃や長年の積み重なった黒ずみやらで装った家とはいかにも不釣り合いで、うっすら光を放っていでもしているように白い。

女がこうして暖炉の灯りと毛布の温もりとの中で安らぐ様になってから、もう一月も経った。
ぐつぐつ音を立てて煮える銅の鍋が、女の鼻を柔らかにくすぐり、そしてほかほかと湯気を立てて彩る夕飯を思い浮かべる間にもまどろむ。
暖かな温もりに心までも包まれて、バターの溶けて広がるように意識が崩れて遠のいていった。

女がその暖炉の程よい温もりののしかかった瞼をようやっとの事で開いたのは、彼女の善良なる同居人である少年が夕飯の仕度をとうに済まして、すっかり冷え切った夕食を前に堪えかねたようだったその時である。
ホラー
公開:18/11/30 13:15
更新:18/12/01 00:45

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容