笑う門には太郎来たる

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「ここに幸せあるかいな?
何をおっしゃるウサギさん!
そりゃ見せかけ違うかい?
何をおっしゃるパンダさん!
人のやないんよ、あんたのや」

陽気な小唄を歌いながら、チンドン屋の太郎さんがこの街を練り歩いていた。チンドンの音は調子っぱずれで、小粋な節は聞く者に笑いを誘った。
「あっ、太郎さん」
「なんだい!姉さん!」
「練り歩いて疲れたら、ウチでお茶でも飲んできな!」
「ありがとよ!恩に切ります!!」
チャチャ
「おっかさん!!」
皆笑う。
戦争の焼け野原をまだ引きずって皆んな貧乏だ。でも逞ましい。
太郎さんも戦地から死にものぐるいで帰って来たら大切なものは全部無くなっていた。
だけど悲しい事を背負って生きるんじゃなくて、人生は自分を大切に楽しく生きるのがコツだと。

笑う門には太郎来たる。

暮れはじめ、豆腐屋のラッパの音と魚の焼いた匂いがするこの街に太郎さんのチンドンはとても良く馴染む。
その他
公開:18/11/30 12:47
更新:18/11/30 20:31
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さささ ゆゆ( 東京 )

最近生業が忙しく、庭の手入れが疎かな庭師の庭でございます。

「これはいかんっ!!」と突然来ては草刈りをガツガツとし、バンバン種を撒きます。

なので庭は、愉快も怖いも不思議もごちゃごちゃ。

でもね、よく読むと同じ花だってわかりますよ。


Twitter:さささ ゆゆ@sa3_yu2





 

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