スペア

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 両耳の後ろにしこりができて大きくなった。耳鼻科に行くと、医大の皮膚科への紹介状を書いてくれた。
 医大の皮膚科へ行くと、医師と助手、インターン十数人が待っていた。問診、CT、血液と耳垢と頬の内側の組織をとった。

 二週間後、結果が出たという。
「スペアでした」
 私は訳がわからなかった。医師は遺伝子データやストレス指数などを示して説明してくれたが、結局は『体質』なのだそうだ。
 今では、どら焼きのようになってしまった私の耳たぶ…
「それで、いつ取ってもらえますか?」
と聞くと、医師は首を振った。
「取れません。スペアですから。ほぼ完成しているので、近日、このスペアが役立つ状況があるものと考えられます。その際は、形成外科をご紹介しましょう」

 両方の耳たぶが引き千切られるような事態が近日中に私を襲うのだ。それがどのようなもので、どのくらい痛いのかを考えると、私は気が狂いそうになる。
その他
公開:18/12/02 10:52

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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