その時、歴史は動いたかもしれない

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天正10年5月。天下統一を目前にした織田信長の元に徳川家康が訪れていた。信長は明智光秀に接待役を命じて、家康を盛大にもてなした。宴も酣という所で、信長は南蛮製の耳かきを家康に見せた。見事な細工に家康は大げさに驚いた。
「これは…なんですかな?」
信長はニヤリと笑った。
「光秀、これの使い方を教えてやれ」
そんな事は三河殿もご存知のはず。そう思ったが、主君の顔を見て光秀は気がついた。
上様は某に一発芸をせよと申されておるのだ。
光秀は食べようとしていた蜜柑を手にして立ち上がり、信長の前まで進むと耳かきを摘み上げた。そして、右手に蜜柑、左手に耳かきを持ち、腰を振って踊りだした。
「蜜柑~、耳かき~」
それぞれを肩の辺りまで持ち上げ、「んん!」と叫んで耳かきを蜜柑に突き刺した。
「蜜柑耳かき~」
ドヤ顔の光秀を信長は問答無用で殴り飛ばした。

本能寺の変が起きたのは、この出来事の翌月の事である。
その他
公開:18/12/01 23:24
更新:18/12/08 12:30
本能寺の変の2週間程前に 家康が安土城に来たのは 史実なのです。

のりてるぴか( ちばけん )

月の音色リスナーです。
ようやく300作に到達しました。ここまで続けられたのは、田丸先生と、大原さやかさんと、ここで出会えた皆さんのおかげです。月の文学館は通算24回採用。これからも楽しいお話を作っていきます。皆さんよろしくお願いします。

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