記憶喪失

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渋谷。
ハチ公前で女子高生が誰かと連絡を取り合っている。
喫煙所では、サラリーマンがぷかぷかと煙草を吸っている。

探偵の江戸川は、人混みを掻き分け進み、横断歩道で信号待ちをする。
退屈そうに欠伸をする。

「にしても、どこを見回しても人、人、人。さすが人口密集地域だな」
ぼそりと文句を垂れる。

信号が青に変わり、横断歩道を渡る。

ふと思う。
都会で殺人事件が発生したとしても、ここに住む連中は、大げさに騒ぎたてたりはしない。
特に自分の周辺で起きる事件以外は興味を示さず、もしも、自らが不幸に苛われ場合、仕返しされるだけであり、覚悟は決まっている。
私は探偵という職業で、警察から依頼された殺人絡みの事件を解決してきたが、本当に苦しみ涙を流しているのは犯人に身内を殺害された遺族や友人のみであった。

今私の目の前で転がる死体もまた、明日になれば人に忘れられてしまうのであろう。
その他
公開:18/11/25 22:00

神代博志( グスク )









 

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