Cyclopes社製眼球真空吸引器

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 それはクロームメッキの蟹のように見える。渡された人はカメラだと思い、ファインダーを覗く。
 器具は眼球位置を測定し、蟹の鋏で、その人の耳たぶを挟み、別の脚がその人の唇を抑えつける。
 それから、別の一対の脚の一本が、瞼に軽微な電流を流し、残りの一本が、瞼を捲り上げる。
 同時に、蟹の胴が二枚貝のように開き、貝のような管が伸びてくる。
 これで眼球を真空吸引するのだ。
 耳たぶを挟む蟹の鋏が、胴を額に押し付けると、眼球が勢いよく飛び出してくる。
 こうして引き抜いた眼球は、器具内部中央の貯蔵ケースへと収まる。視神経は、胴が閉じる際に切断される。
 大抵の人間は、眼球が吸引される時点で卒倒するが、蟹の脚が両手の指に絡んでいるので、器具が落下する恐れは無い。
 このように説明すると随分と複雑なようだが、実際には数秒で完了するのであるから、周囲の人間には何が起こったのか検討もつかないのである。
SF
公開:18/11/28 14:37

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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