まじないドリップ
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常連のミナミさんが顔をこわ張らせている。テーブルには婚約者とそのご両親。初対面らしい。コーヒーを出して戻った僕に、マスターが囁いてくる。
「大丈夫。なんせ、今日のコーヒーは君が淹れたんだからね」
ハンドドリップは教わったばかり。そんな僕のコーヒーで、リラックスなんてできるわけない。
「おまじない、きちんと唱えたかい?」
「美味しくなあれ、ですよね。やりましたよ」
「なら安心だ。見ててごらん」
ミナミさんに、まだ笑顔はない。でもカップを口に運んだとたん、急に背筋がすうっと伸び、佇まいが凛として見えてきた。
テーブルの空気も変わった。ご両親の目の色も明らかにさっきと違う。
「こういう時に必要なのは”美しさ”なんだよ。君のコーヒーさ、まだフィルターに”味”が残っちゃってんだな」
ミナミさん、コーヒーの味がしなかったのは緊張のせいじゃなさそう。でも今日の成功は、きっとその一杯のおかげ。
「大丈夫。なんせ、今日のコーヒーは君が淹れたんだからね」
ハンドドリップは教わったばかり。そんな僕のコーヒーで、リラックスなんてできるわけない。
「おまじない、きちんと唱えたかい?」
「美味しくなあれ、ですよね。やりましたよ」
「なら安心だ。見ててごらん」
ミナミさんに、まだ笑顔はない。でもカップを口に運んだとたん、急に背筋がすうっと伸び、佇まいが凛として見えてきた。
テーブルの空気も変わった。ご両親の目の色も明らかにさっきと違う。
「こういう時に必要なのは”美しさ”なんだよ。君のコーヒーさ、まだフィルターに”味”が残っちゃってんだな」
ミナミさん、コーヒーの味がしなかったのは緊張のせいじゃなさそう。でも今日の成功は、きっとその一杯のおかげ。
その他
公開:18/11/27 22:30
更新:18/12/01 23:55
更新:18/12/01 23:55
400字って面白いですね。もっと上手く詰め込めるよう、日々精進しております。
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