内回りの先に。

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その日は師走も近いというのに、気持ち悪いほど生ぬるい風が吹いていた。
外回りの営業で駆けずり回っていた俺は、環状線のホームに駆け込む。ホームは女性の集団で混み合っていた。
「何事だ?」
俺は女性たちの下半身に目を奪われていた。全員、紺色のニーハイを履いていたのだ。それもミニスカで。
絶対領域に吸い込まれるように、俺はニーハイ集団の波に飲み込まれ、そのまま電車に乗り込んでしまった。
「しまった。これ、内回りじゃないか!」
取引先に遅刻するぞ、と嫌な汗が吹き出す。ただ、それ以上にゾクッとする気配を感じ取った俺は、あたりを見回した。
ニーハイ集団の視線が突き刺さる。一瞬、意識が飛んだ。
はっ、と我に返った俺の目に飛び込んできたのは、ルーズソックス。
ニーハイ集団がルーズソックス集団に変わっていたのだ。
「何が起きた?」
ふと、車内広告に目が止まった。
「嘘、だろ」
どうやら俺は、20年前に……。
その他
公開:18/11/28 23:56
更新:18/11/29 00:00
内回りのルーズソックス スクー いいニーハイの日

壬生乃サル

まったり。

2022年…3本
2021年…12本
2020年…63本
2019年…219本
2018年…320本 (5/13~)

壬生乃サル(MiBU NO SARU)
Twitter(@saru_of_32)

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